スマートフォン族の病気②
一時的記憶喪失の危険
最も怖いケースとして、テクノストレス症候群による「一時的記憶喪失」がある。
スマートフォンに夢中で、駅で下車ができず次の駅まで乗りすごす、ということがある。
脳疲労がピークになると、脳の中の海馬が身体を守るためにヒューズを一時的にとばす。そのことで一時的記憶喪失が起こりやすくなる。「二秒~五秒」が多い。
例えば、運転しているときカーナビを見る、同時に信号も見ている、そんな時、信号が変わった、発信した。実は赤信号に変わっていた。こんな勘違いが起きる(二秒~三秒)。
アクセルを踏んでしまった。歩行者をはねてしまった。
赤信号と思っていたのに、信号は赤になっていた。「二秒~五秒」で起こる一時的記憶喪失がある。自分と他人を傷つけてしまうことになる。いつ起こるか、予測のつかない病気である。
子供の頃から中、高、大学、社会人になるまでIT機器の生活に慣れすぎることによって、脳疲労が蓄積していく。いつ、どこで起こっても不思議ではない。一時的記憶喪失にかかる恐れは誰にでもある。
自分は、主婦だからスマートフォンやケイタイをいじっても大丈夫と思うかもしれないが、とんでもないことが起こる。
子育て、買物、パートの仕事、家族の食事、その他の雑用をしながらスマートフォン、インターネットをあわただしく見る。
同時作業で脳の疲労度は高くなる。
昨日かったはずのものがない。どこを探しても探しものが出てこない。諦めかけた。
しばらくして冷蔵庫へ水を取りに行った。冷蔵庫のとびらを開けると、探していた歯みがき粉が食材の横に、すまし顔で並んでいた。
驚く。「私は頭がおかしくなっている!」と思った。もしかして、アルツハイマー型認知症の始まりかと……胸がざわつく。
忙しすぎて、脳が一時的にパニックになって、数秒間記憶を失う。だが、慣れた作業は身体が勝手に動くようになっている。そこで「病気ではない、気のせいだろう」自己診断してしまう。
忙しすぎる時は「車の運転」「家事の天プラをあげる」等は絶対にするべきではない。
一時的記憶喪失は数秒間、海馬のスイッチのヒューズがとぶ。そして数秒で元に戻るから「自分が一時的記憶喪失になったことに気がつかない」のである。
アルツハイマー型認知症の初期と似ている症状であるから、見逃される。診断が難しい症状である。
テクノストレスによって脳疲労が続くと若い受験生でも社会人でも起きてしまう。IT機器が生み出した新しい病が、今後どこまで広がるのか心配である。個々の脳疲労度は次のように異なる。
自分は受験勉強で睡眠不足だと 「頭がボゥー」としてしまうタイプの人 |
自分は一晩でもTVゲーム、麻雀をしても平気である。「朝起きれないが……」というタイプの人 |
脳疲労で一時的な記憶喪失が出るのは(2)のタイプの人である。
(1)のタイプの人は、「頭がボゥー」として異変を感じ、眠る。
(2)のタイプの人は、自分は一晩寝なくても平気という自信があるため、引き続きケイタイ、メール、スマートフォンをいじる。脳はブルーライトを浴びて、眠れなくなる。
熟睡しないで肉体的疲労を重ねると、脳のストレス度は平行して強くなる。
一時的記憶喪失を起こして、体を守ろうとするスイッチが入りやすくなる。
前の晩に熟睡していない状態で同時作業「運転とヘッドホンでガンガン音楽を聞く」「カーナビを見る」すると前方不注意で二秒~五秒記憶喪失が起こる。そして事故となる。
どんなに地震があっても疲れている時は同時作業はしてはならない。工場で働いていたら、指を切断してしまう。ベルトコンベヤーに指がはさまれる事故になったりする。
昔、私が子供だったころを思い出した。
ランドセルを背負って「ただいま」と帰宅。玄関先に外科医だった父親の患者さんが指をぶらさげて立っていた。タオルが真っ赤に染まっていた。
子供の私には、衝撃で口は開いているが、言葉が出なかった記憶がある。
働いていた看護師さんが私の眼をふさいだ。だが、遅かった。垂れ下がった指が、目に焼きついてしまった。
人の体は、指であろうと、足であろうと全て大切な一部である。“悲しいかな”人は事故にならないと反省しないところがある。
私は子供の頃から多くの人が、苦しい、痛いと泣く環境で育ってきている。だから、人が泣く姿はもう見たくない。そういう気持ちがあるから、本を通して「警告したがる」のだろうと思う。
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