一家を破滅させる
「孤独病」④
多くの人との出会いが自分を育ててくれる
いろいろな体験をして、人間は育っていくのだが、その体験をするに当たって、必ずその人を世話してくれる人がいる。その人の話を、本気で聴いているのか? そうでないのか? が後々出てくる。
例えば、スポーツの練習に行くと、教えてくれるコーチがいる。ここが問題である。
素直な性格の人は、コーチが言うことを守る。だから、短い時間で上達する。
一方では、コーチに注意されると、心の中で腹を立てる。「何言ってんだ!!」と反抗的になる。頑固な性格の人は、同じ失敗を何度もくり返し、何年経っても同じ場所で足踏みをしている。
だが、本人は、素直な気持ちになれなくて、なぜ自分ばかり苦労して辛い思いをするのだろうと、内心思ってすねてしまう。一向に、自分の頑固さに気づく様子がない。数少ない友達も離れてしまう。
素直な性格の人は、人に合わせることができる。新しい友達ができやすくなる状況が整う。新しい友達に褒められる。素直だから、「本心から喜ぶ」。褒めた新しい友達は、いまさらお世辞だと言えない。一緒になって笑うしかない。
お世辞で、こんなに喜んでくれる人は、そんなにいない。もしかして、彼は本当に良い人かもしれないと思う気持ちになった。
もしかしてこの僕の本当の友達になってくれるかもしれない。そう思わせた彼は、僕の心を洗脳した。
「彼の価値だなぁ~!」と思ってしまった。悪びれることもなく、素直な性格は、汚れた心を洗い流す力を持っていると思った。
理屈ではなく、幾つになっても、彼のように素直でいたら、他人に好かれるだろうと、人にモテるヒントをもらった。
仕事で時間に追いかけられると、ずるいことを考えてしまう。「簡単」で「短縮できる近道」を、心の中で探す自分が生まれているのだろう。年をとるにつれて、ずるがしこい自分の方が、強くなるから、素直さが消えてしまうのだろうと反省させられた。
彼の素直な性格を真似したら、今よりも他人に好かれる人間になれるかもしれないと教えられた。だが、急に素直な性格になりたくても、なれるものではない。だから、何に対しても好奇心を持つことにした。
好奇心が大きくなれば、知らないことを知ることになる。多くの人達との出会いが磨きをかけてくれる。才能なんてなくても、人との出会いがあれば、ダメな自分も育つと思った。
僕は、親に勉強させられる家庭に育ち、友達と遊んだ記憶は小学校二年生ぐらいで止まっている。だから、クラスの友達が、野球やサッカーをしているのが羨ましく思えた。
医師国家試験をパスしても、世の中を知らない。苦労するのは当然だと思う。今になって思えば……「自分が育っていないから苦労したんだなぁ~」と思うようになってきた。
どんな人も! ひとの生命は個々に光っている。できる人! できない人! 関係なく、命は光っている。
その人が体験した苦労話が、時はめぐりめぐって自分自身の身の上に降りかかってくる。
そう言えば……いぜんに同じことを話してくれた人がいる。
あ、そうだ!「あの人が言っていたように、してみよう!」と思いつく。
何げなく聞いていた人の話で助けられることもある。人の話は、素直な気持ちで聴いておくと助かることがある。
人の苦労話は、体験した何年ものことがたった五分、一〇分で聴くことができる。
大切な知恵の薬かもしれない。
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